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2018年の宅建士でも判決文問題が出題されましたね、以前解説したように判決文問題は内容を読み解かなければいけない半面、判決文に答えが書かれているといっても過言ではないので、 落ち着いて見ていきましょう。
●2018年問8
次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。
(判決文)
賃借人は、賃貸借契約が終了した場合には、賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ、賃貸借契約は、賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり、賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ、建物の賃貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると、建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、(中略)その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。
1.賃借物件を賃借人がどのように使用しても、賃借物件に発生する損耗による減価の回収は、賃貸人が全て賃料に含ませてその支払を受けることにより行っている。
2.通常損耗とは、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する。
3.賃借人が負担する通常損耗の範囲が賃貸借契約書に明記されておらず口頭での説明等もない場合に賃借人に通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになる。
4.賃貸借契約に賃借人が原状回復義務を負う旨が定められていても、それをもって、賃借人が賃料とは別に通常損耗の補修費を支払う義務があるとはいえない。
●簡単にしてみよう
今回の判決文を要約すると
部屋を借りたら、返すときに原状回復義務があるよね。
↓
普通に使って劣化する分(通常損耗)は、賃料に含んでいるよね。もちろん、変な使い方して劣化した分は原状回復義務あるよね。
↓
その分(通常損耗分)も請求したかったらちゃんと特約書いてよ。
こんなものです。
●選択肢1
1.賃借物件を賃借人がどのように使用しても、賃借物件に発生する損耗による減価の回収は、賃貸人が全て賃料に含ませてその支払を受けることにより行っている。
誤り
この選択肢は、マーカーの部分と本文。
「賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。」
を読み取ることができれば正解が出せます。
つまり、本文中で言いたいことは
「普通に使って劣化するのは当たり前なんだから、賃料の中に必要経費として含んでるよね。」
ということです。
ただし、どのように使用してもなんてことはどこにも書いていません。
宅建の勉強をしていなかったとしても、「通常の使用=どのように使用しても」とはならないのは明白だと思います。
この選択肢では、「どんな風に使って部屋を汚したり壊したりしても、修繕費は賃料に含まれるよね。」ということになります。
どう考えてもおかしいですね。
というわけで誤りになります、この問題の正解の選択肢はいきなり肢1になります。
●選択肢2
2.通常損耗とは、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する。
正しい
1で解説したところと同じですね、正しい選択肢になります。
●選択肢3
3.賃借人が負担する通常損耗の範囲が賃貸借契約書に明記されておらず口頭での説明等もない場合に賃借人に通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになる。
正しい
後半部分にほぼそのまま書いてあります。
●選択肢4
4.賃貸借契約に賃借人が原状回復義務を負う旨が定められていても、それをもって、賃借人が賃料とは別に通常損耗の補修費を支払う義務があるとはいえない。
正しい
これも判決文の言いたいことそのままですね。
●まとめ
- この問題は判決文問題の中でも正解が出しやすいと思います。
- 一見して難しそうでも飛ばすのはもったいないです。