いつもお世話になっております、不動産業界に入って宅建士として初めてまとめた物件は借地物件でした、沖縄で中古不動産を扱う株式会社イエカリヤ代表の當間です。
借地権付き建物は、土地付きの時と違って地主という関係者が一人増えるので調整がさらに必要になってきます。
初めての案件だったので大変でしたが、いい勉強になりました。
さて、今回お話する内容ですがその借地のお話です。
以前聞いた話なのですが、地主様が借地契約で思わぬトラブルに見舞われたという事でした。
●ことの経緯
・土地の所有者であるAさんは、とある業者から建物を建築する目的で借地契約を持ち掛けられた。
・特に使っていない土地だったので、期間30年の借地契約を承諾、Aさんは30年後に土地が帰ってくると思っていた。
・業者からは「普通の借地契約です。」と言われた、なるほど契約書にも「普通借地契約」と書かれている。
ふと、そのことを知り合いの不動産会社に話すと、何かがおかしいことに気付きました。
どこに違和感があるかお分かりですか?宅建を勉強したことがあったり、法律関係のお仕事をされていない方はピンと来ないかもしれません。
実はこの契約、30年で土地が返ってこない可能性が高いんです。
普通に考えればありえないですよね、30年満了で貸していたはずなのに30年経っても変換されない。
それなら何のための契約書なんだ!!と感じると思います。
●民法と借地借家法
前提として法律の話になるのですが、まず、賃貸借というのは民法によって規定されています。
土地や建物だけでなく、CDを借りたりレンタカーなどもそうですね、物を貸し借りしてそこにお金を発生させることを賃貸借といいます。
しかし、民法の規定通りに土地や建物を賃貸借すると、借主にとって不利なことが多く、お金を払って借りているにも関わらず借主が非常に弱い立場になります。
例えば民法通りに従うなら、土地を借りて建物を建てている状態で、その土地が売られた際、買った人に
「私はこの土地を借りていますのでこのまま使い続けます。」
と主張するためには、土地に「この土地は私が借りています。」という登記を事前にしておかなければいけません。
そして、地主さんの協力があって初めてその登記をすることができます。
しかし、法律的に元の地主がその登記に協力する義務はないので実質的にはかなり難しかったのです。
どうしろっていうんだ、そんなの誰も土地を借りないじゃないか!!と思いますよね、なので、借主を守るための法律として借地借家法(しゃくちしゃっかほう)が定められました。
この法律は、建物所有目的の借地であったり、部屋を借りたりする方を保護するための法律なので民法よりも優先されます。
先ほどの例で言えば、賃借人の名義の建物がたっていれば、後から土地を買った人に「私はこの土地を借りていますのでこのまま使い続けます。」と主張できるようになりました。
ここからが本題です、この借地借家法ですが、借主を保護しようとしたあまり、今度は貸主が不利になってしまったんです。
法律はよく天秤に例えられますが、借主側に重りを載せすぎて、貸主側が軽くなってしまったんですね。
その中の一つが今回の話のキモになります、借地借家法の規定を抜粋します。
第五条 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。2 借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。3 転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする土地の使用の継続を借地権者がする土地の使用の継続とみなして、借地権者と借地権設定者との間について前項の規定を適用する。(借地契約の更新拒絶の要件)第六条 前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。
となっています。
長いのでマーカーの部分だけお読みになれば結構です。要するに、
・建物が建っている間は借地契約は更新される。
・地主から更新の拒絶もできるが、それには正当事由。つまり、返すに値する理由が必要。
ということになります。
「じゃあ、正当事由があればいいじゃないか。」
という話になりますが、この正当事由、認められるには相当な理由が必要になります。
例えば、
地主が他に住むところがなくなっていた。
建物が実質使われていなかった。
立ち退き料を払った。
賃料の滞納があった。
などということが考慮されますし、どれか一つだけではなく複合的に考えなければならず、今までの経緯なども見なければいけないので非常に複雑です。
調べれば判例があるかもしれませんが、実務上では正当事由を使って更新拒絶をした例というのはかなり少ないと思います。
今回の地主さんがした契約はこの契約になります、なのでいくら期間満了が30年ということであっても更新拒絶をするのは難しく、30年以降も貸し続けなければならないかもしれません。
まだ更新の満了日が来ていないので、この会社がどういう反応をするのかわからないですが、法律を盾にされるとAさんは泣き寝入りになるかもしれません。
ここまでの話を聞くと、
「もう、そんなんだったら土地は絶対に貸さないよ。」
と考えるのが普通だと思います。
実際、同じように考える方が多く、借地契約を円滑に進めるために作られた法律なのに、土地を貸してくれる人が少なくなったという泡沫転倒なことになってしまいました。
先ほどもお話したように、法律は天秤のようなもので、片方に有利すぎると修正を入れて国がバランスをとるようにしてくれます。
そこで新たに設けられたのが「定期賃貸借契約」という概念です。
この契約なら、更新をせず土地を返してもらうことができます、今回は話が長くなってしまったので、この件は明日詳しく解説いたします。
今日の所は、建物所有目的の普通借地契約は貸主に不利なことが多い、ということだけお分かりいただけたらと思います。
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