いつもお世話になっております、沖縄の中古物件をリノベーションすることでワクワクを増やしたい、株式会社イエカリヤ代表の當間です。
不動産売買契約をする際、かならず行うのが売買契約書の読み合わせです。
不動産の売買が慣れている人ならまだしも、人生の中で数回しかない方が多いので中身を理解するのは大変です。
もちろん、契約当日は理解していただけるように説明しますが、その前に重要事項説明などで頭がいっぱいなので右から左に抜けていきます。
ということで、事前に内容を知っていた方が本当に聞きたい事や契約に集中できるのでイメージが付くように簡単な解説をしていきたいと思います。
細かい内容を書いていくときりがないのでざっくり行きます。
不動産売買契約書の中身はある程度決まっている
以前、お客様とお話ししている中で「売買契約書って、全部不動産会社が作っていると思っていた。」とおっしゃっていました。
もちろん、売買契約書の内容は宅建業者が責任をもって作成しますが、ある程度の書式は決まっています。
宅建協会が推奨しているものが多いですが、フランチャイズや大きい会社であれば自社のフォーマットがあったりもします。
ですが、言及されている内容は似ているので基本が分かれば安心です。
今回紹介する条項は、一般売主土地建物公簿用となっております。
契約書にも種類があり、全てを網羅すると大変ですし、大まかな内容は似ているのでよくある売買の形式を採用しました。
「一般売主」は宅建業者ではない人が売主という意味です。
「公簿用」は後述しますが、実測で差が出ても金額に反映しないという意味合いです。
つまり、今回の契約書は、「宅建業者でない人が土地建物を実測の差が出ても金額を変えない契約」ということになります。
2020/1/28現在、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会推奨の書式です。
不動産売買契約条項
(売買の目的物及び売買代金)
第1条 売主は、標記の物件(A)(以下「本物件」という。)を標記の代金(B1)をもって買主
に売渡し、買主はこれを買受けた。
この、契約書は不動産の「売買」契約です、売買する物件は(A)に書いています。
(B1)に書いている金額での売買です。
(売買対象面積)
第2条 売主及び買主は本物件の対象面積を標記面積(A)とし、実測面積との間に差異が生じて
も互いに異議を申し立てないとともに、売買代金増減の請求をしないものとする。
ここが冒頭に書いた、実測してもお金に関係ないですよと言う項目です。
標記面積(A)、登記簿謄本の面積になることが多いですが、その面積と実測に差があっても金額を変えないという内容です。
ほとんどの不動産は4,321万円というように、万単位が基本です。
もちろん何百何十円と言ったような細かい数字にすることもできますが、あまり見かけません。
それに加え、土地を坪単価~万円という考え方が多いのですが、実測すると0.~㎡くらいの誤差はよくあります。
その差を調整して売買代金を決定すると、かなり細かい数字になるのでかなり面倒です。
なので、
「この売買は実測と差が出ても、同じ金額で売買しようね。」
「思っていたより大きくても金額を上げないし、小さくても金額を下げないよ。」
という意味です。
坪単価がかなり高かったり、大規模な土地だと金額の差が大きくなったりするので実測を用いることが多いですが、通常は今回ご説明した内容が多いです。
(手付)
第3条 買主は、売主に手付として、この契約締結と同時に標記の金額(B2)を支払う。
2 手付金は、残代金支払いのときに、売買代金の一部に充当する。
手付金は、契約時に「本当に買う意志があります。」という証明の様なお金になります。
手付金の金額を(B2)に書いています、手付金は売買代金に含めるので、残代金支払いの時は手付金を引いた額を払えばいいという訳です。
売買金額の5~10%前後になることがほとんどです。
(境界の明示)
第4条 売主は、買主に本物件引渡しのときまでに、隣地との境界を現地において明示する。
売主は現地でどこからどこまでが売買の対象の土地なのかを説明します。
土地の境界は土地家屋調査士さんが、ポイントという印をつけてくれるので、それを目印に確認します。
余談ですが、基本的に土地家屋調査士に依頼するお金は売主が負担することが多いです。
買主負担にする時は特約を付けておいた方がいいでしょう。
(売買代金の支払時期及びその方法)
第5条 買主は、売主に売買代金を標記の期日(B3)、(B4)までに現金又は預金小切手で支払
う。
(B3)には中間金、残代金決済日までに支払う手付金の様なものを払う期日とその金額。
(B4)には売買金額から手付金と中間金を差し引いた額がとその期日が記入されます。
現金または小切手と書かれていますが、一般的な売買だと振込にすることが多いので現金を目の当たりにすることはありません。
また、中間金は契約から決済までの期間が長いときや条件付きの時以外はあまりみません。
(所有権移転の時期)
第6条 本物件の所有権は、買主が売買代金の全額を支払い、売主がこれを受領したときに、売主
から買主に移転する。
所有権移転の時期を明記しています、当たり前ですが全額支払った日に移転登記をします。
これは、司法書士の先生に依頼します。
また、売主の住所が変わっていたり、抵当権などの設定があると追加で依頼します。
(引渡し)
第7条 売主は、買主に本物件を売買代金全額の受領と同時に引渡す。
所有権移転と似ていますが、要はカギの受け渡しと思って構いません。
前の条項は法律的に、こちらは実物的に譲ってくださいというお話しです。
所有権移転の項目はほとんど変わることはありませんが、こちらは売主さんの金銭的な面や引っ越し状況によって変わる可能性もあります。
例えば、所有権移転は残代金支払い日にして、カギの受け渡しを2週間後にするという特約もあり得ます。
(所有権移転登記の申請)
第8条 売主は、売買代金全額の受領と同時に、買主の名義にするために、本物件の所有権移転登
記申請手続きをしなければならない。
2 所有権移転登記の申請手続きに要する費用は、買主の負担とする。
売主は所有権移転に必要な書類などを提出してください。
所有権移転登記に必要なお金(司法書士への報酬や登録免許税など)は買主が負担します。
ちなみに、沖縄では所有権移転の費用は買主・売主の折半がおおかったのですが、今は買主負担が主流です。
所有権移転以外の登記費用は内容によってどちらか片方が負担することがほとんどです。
例えば借り入れをするための抵当権設定は買主側。
売主の抵当権が入っていれば、消さないといけないので売主側が負担するといったような感じです。
(物件状況の告知)
第9条 売主は、本物件の状況について別添「物件状況確認書(告知書)」にて買主に告知するも
のとする。
建物の雨漏りや白アリ、近隣とのトラブルなど、売主が知っている情報を別添の告知書に記載しトラブルが無くなるようにします。
(付帯設備の引渡し)
第10条 売主は、別添「付帯設備表(表1・表2)」のうち「有」と記したものを、本物件引渡し
と同時に買主に引渡す。
2 売主は、前項の付帯設備については、瑕疵担保責任を負わないものとする。
今回の売買で付属する物をまとめた表、付帯設備表を買主に確認してもらいます。
エアコンやキッチンなどは、不動産と切り離せるので
「建物は売るけど、キッチンは持っていくよ。」
と急に言われても困ります。
なので、この付帯設備表で「あれは付ける、これは持ってく。」など決めて確認します。
あくまで付帯設備はオマケ?なので後述する瑕疵担保は負いませんという内容です。
(負担の消除)
第11条 売主は、本物件の所有権移転の時期までに、抵当権等の担保権及び賃借権等の用益権その
他買主の完全な所有権の行使を阻害する一切の負担を消除する。
第8条でちらっと書きましたが、売主の抵当権など、担保や使用の制限がかけられている状態で買っても不安です。
例えば売主の抵当権が残った状態で売主が借り入れを返さなければ、せっかく買った不動産を競売にかけられています。
そんなことにならないためにも、このような買主の不利になる権利を抹消してキレイな状態で受け渡ししてくださいという内容です。
(印紙代の負担)
第12条 この契約書に貼付する収入印紙は、売主・買主が平等に負担するものとする。
不動産売買の契約書には収入印紙を貼らなければいけません。
その印紙の負担をどうするかというと、お互いで折半しましょうという内容です。
よくある売買だと売主に1部、買主に1部契約書の原本をお渡ししますので、それぞれ自分の契約書に貼る分を購入することが多いです。
(公租・公課の負担)
第13条 本物件に対して賦課される公租・公課は、引渡し日の前日までの分を売主が、引渡し日以
降の分を買主が、それぞれ負担する。
2 公租・公課納付分担の起算日は、標記の期日(D)とする。
3 公租・公課の分担金の清算は、残代金支払時に行う。
公租・公課は固定資産税だと思っていただいて構いません。
1月1日に所有している人の所に請求が行くので、役所が「この日に売買したんだね、じゃあ残りはその人に請求するね。」なんてことはしてくれません。
売主がその年の固定資産税を払うと不公平なので残代金支払いの日で按分して清算します。
その日っていつから計算するの?という日付が(D)に書いています。
1月1日か4月1日のどちらかですが、沖縄では1月1日が多数です。
詳しくはコチラから
(収益の帰属・負担金の分担)
第14条 本物件から生ずる収益の帰属及び各種負担金の分担については、前条第1項及び第3項を
準用する。
賃料の収入がある時は、その分もきちんと清算しないといけません。
例えば、1月分の賃料を売主が受け取っていた場合、1月10日に決済があれば、残りの日数分の賃料を買主に渡します。
これは前条の考え方と同じように扱いますということです。
(手付解除)
第15条 売主は、買主に受領済の手付金の倍額を支払い、又買主は、売主に支払済の手付金を放棄
して、それぞれこの契約を解除することができる。
2 前項による解除は、下記の事項のいずれかが早く到来したとき以降はできないものとする。
① 相手方がこの契約の履行に着手したとき
② 標記の期限(E)を経過したとき
第3条に書いてあった手付金の効力が書かれています。
ざっくり言うと「どちらか一方が自分の都合でキャンセルしたら罰金ね。」
的なことです、売主がキャンセルしたら倍額返金。
買主がキャンセルしたら手付金没収です。
(引渡し前の滅失・毀損)
第16条 本物件の引渡し前に、天災地変その他売主又は買主のいずれの責にも帰すことのできない
事由によって本物件が滅失したときは、買主は、この契約を解除することができる。
2 本物件の引渡し前に、前項の事由によって本物件が毀損したときは、売主は、本物件を修
復して買主に引渡すものとする。この場合、売主の誠実な修復行為によって引渡しが標記の
期日(C)を超えても、買主は、売主に対し、その引渡し延期について異議を述べることは
できない。
3 売主は、前項の修復が著しく困難なとき、又は過大な費用を要するときは、この契約を解
除することができるものとし、買主は、本物件の毀損により契約の目的が達せられないとき
は、この契約を解除することができる。
4 第1項又は前項によってこの契約が解除された場合、売主は、受領済の金員を無利息で遅
滞なく買主に返還しなければならない。
契約から残代金支払いまでの間に自然災害などで物件が壊れたり無くなってしまった時の取り決めです。
民法上では、契約から残代金支払いまでに建物が自然災害などで滅失してしまった時は、買主はそのまま契約を進めて購入しないといけないのです。
普通に考えてそれはあり得ないですよね?なので契約書でその場合は
「どちらのせいでもないのに、物件が無くなったら、もちろん白紙撤回して手付金も利子とか無しで撤回ね。」
という条項がいるわけです。
(契約違反による解除)
第17条 売主又は買主がこの契約に定める債務を履行しないとき、その相手方は、自己の債務の履
行を提供し、かつ、相当の期間を定めて催告したうえ、この契約を解除することができる。
2 前項の契約解除に伴う損害賠償は、標記の違約金(F)によるものとする。
3 違約金の支払いは、次のとおり、遅滞なくこれを行う。
① 売主の債務不履行により買主が解除したときは、売主は、受領済の金員に違約金を付加
して買主に支払う。
② 買主の債務不履行により売主が解除したときは、売主は、受領済の金員から違約金を控
除した残額をすみやかに無利息で買主に返還する。この場合において、違約金の額が支払
済の金員を上回るときは、買主は、売主にその差額を支払うものとする。
4 買主が本物件の所有権移転登記を受け、又は本物件の引渡しを受けているときは、前項の
支払いを受けるのと引換えに、その登記の抹消登記手続き、又は本物件の返還をしなければ
ならない。
どちらかが、やらなければいけないことをやらなかった時の処遇を書いています。
大体売買金額の10%が違約金になることが多いです。
(反社会的勢力の排除)
第18条 売主及び買主は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。
自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以
下総称して「反社会的勢力」という)ではないこと。
自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう)が反
社会的勢力ではないこと。
反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。
本物件の引渡し及び売買代金の全額の支払いのいずれもが終了するまでの間に、自ら又
は第三者を利用して、この契約に関して次の行為をしないこと。
ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為
2 売主又は買主の一方について、次のいずれかに該当した場合には、その相手方は、何らの
催告を要せずして、この契約を解除することができる。
ア 前項又はの確約に反する申告をしたことが判明した場合
イ 前項の確約に反し契約をしたことが判明した場合
ウ 前項の確約に反した行為をした場合
3 買主は、売主に対し、自ら又は第三者をして本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動
の拠点に供しないことを確約する。
4 売主は、買主が前項に反した行為をした場合には、何らの催告を要せずして、この契約を
解除することができる。
5 第2項又は前項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された者は、第17条第
2項の規定にかかわらずその相手方に対し、違約金(損害賠償額の予定)として標記の違約
金(G)(売買代金の20%相当額)を支払うものとする。この場合の違約金の支払いについて
は、第17条第3項に準ずるものとする。
6 第2項又は第4項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された者は、解除に
より生じる損害について、その相手方に対し一切の請求を行わない。
7 買主が第3項の規定に違反し、本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供し
たと認められる場合において、売主が第4項の規定によりこの契約を解除するときは、買主
は、売主に対し、第5項の違約金に加え、標記(H)(売買代金の80%相当額)の違約罰を制
裁金として支払うものとする。この場合第17条第4項の規定にかかわらず、買主は本物件の
所有権移転登記の抹消登記手続き、及び本物件の返還をしなければならない。
とにかく反社会的勢力じゃないですよね?という内容。
もしそうだったらエライ目あいますよという説明です。
(融資利用の場合)
第19条 買主は、この契約締結後すみやかに、標記の融資(I)―1のために必要な書類を揃え、
その申込手続きをしなければならない。
2 標記の融資未承認の場合の契約解除期限(I)―1までに、前項の融資の全部又は一部に
ついて承認を得られないとき、又、金融機関の審査中に標記の融資未承認の場合の契約解除
期限(I)―1が経過した場合には、本売買契約は自動的に解除となる。
3 前項によってこの契約が解除された場合、売主は、受領済の金員を無利息で遅滞なく買主
に返還しなければならない。同時に本物件の売買を媒介した宅地建物取引業者も受領済の報
酬をそれぞれ売主・買主に無利息にて返還しなければならない。
4 買主自主ローンの場合、買主は、融資利用に必要な書類を標記(I)―2までに金融機関
等に提出し、その提出書類の写しを売主に提出しなければならない。買主が、必要な手続き
をせず提出期限が経過し、売主が必要な催告をしたのち標記の融資未承認の場合の契約解除
期限(I)―1が過ぎた場合、あるいは故意に虚偽の証明書等を提出した結果、融資の全部
又は一部について承認を得られなかった場合には、第2項の規定は適用されないものとする。
買主がどうしても今回の売買で融資が出来なかったら、白紙撤回で手付金とかも返金ね。
という内容です。
(瑕疵担保責任)
第20条 買主は、売主が標記(J)において瑕疵担保責任を負担する場合は、本物件に隠れた瑕疵
があり、この契約を締結した目的が達せられない場合は契約の解除を、その他の場合は損害
賠償の請求を、売主に対してすることができる。
2 契約の解除をした場合においても、買主に損害がある場合には、買主は売主に対し、損害
賠償請求をすることができる。
3 建物については、付帯設備を除き、買主は売主に対して、本条第1項の損害賠償に代え、
又はこれとともに修補の請求をすることができる。
4 本条による解除又は請求は、本物件の引渡し後標記(J)の期間を経過したときはできな
いものとする。
隠れた欠陥(瑕疵)があった時の責任を取るかの内容。
売主が業者であれば最低2年ですが、今回は一般なので、なし~3か月くらいが多いです。
(諸規約の承継)
第21条 売主は、買主に対し、環境の維持又は管理の必要上定められた規約等に基づく売主の権利・
義務を承継させ、買主はこれを承継する。
マンションなどがほとんどですが、ルールなどが決められていたら買った人も守ってくださいということです。
(協議事項)
第22条 この契約に定めがない事項、又はこの契約条項に解釈上疑義を生じた事項については、民
法その他関係法規及び不動産取引の慣行に従い、売主及び買主が誠意をもって協議し、定め
るものとする。
契約書に書いていること以外に調整したいことがあったら、お互い協力して話し合ってねと言うこと。
(訴訟管轄)
第23条 この契約に関する訴訟の管轄裁判所を本物件所在地の管轄裁判所と定めるものとする。
万が一裁判になったら、不動産の所在地管轄の裁判所です。
(特約条項)
第24条 別記特約条項のとおりとする。
他に書いておくことがあれば特約に書きます。
まとめ
今回解説した内容はあくまでイメージしやすくする程度なので、契約の時に疑問に思ったらその都度、宅建士に質問してください。